はじめに荒枉げに、
茶杓の姿を描く

草を共筒をつくる。

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茶の湯を嗜んでおられる方ならご存じだろうが、筒は「真」「行」「草」の三つの形態にわかれる。「真」は皮をすべて削いで、丸くきれいに仕上げたもの。「行」は上下を縞削りに削ぎ、「草」は自由に変化をみせて削ったものだ。
 また、筒には共筒、追筒(極筒)、替筒の種類がある。共筒は、茶杓と同一の作者が作ったもの。追筒は筒が存在せず、裸のままで伝わった茶杓に、後世の人が筒を作って保存したもの。そして替筒は、共筒が痛まないように替えを目的に作ったものである。
 ここでの筒づくりは、中節の茶杓に合うように「草」の筒を作りたいと思う。

1 筒を作る

■材料を選ぶ

 筒材は、一般的に白竹が多く用いられるが、茶杓同様に煤竹、ごま竹、皺竹・・・などの材質も使われる。何を選ぶかは作者の感性によると思う。
 また基本的には竹の生えている状態とは逆──根方向が上向きになる──に用いるが、順で使うか、逆で使うかも考慮の対象になる。
 筒材の太さだが、当然茶杓が入るだけの口径が必要である。櫂先の長さを約2センチとすると枉げが急なものは、それだけ口径が太くなり、ゆったりしたものは多少細くなってもかまわない。こう考えると1本の竹の中でも先端部分は筒材に向かないということになる。

 さらに筒の長さだが節から節までの間が短いと茶杓が収まらないので、たとえば茶杓長が18センチ前後であれば節間は20センチ以上が必要であることも考慮しておきたい。
こうしたことをすべてふまえた上で筒材を選択する。

■竹に寸法を書き込む

 上記の事柄を考慮した上で、白竹で筒を作ってみたいと思う。
茶杓は「茶杓を削る」の項で述べた中型約18センチとする。筒に使う竹の内径は1.7~2センチくらいのものを選ぶ。

 竹は底辺(節のある部分)から測って22~23センチあたりのところで切断する。長さを測る場合、細い棒状のものを内に差し込んで測るとよいだろう。これは底辺の節部の厚さがあるので、外側から測ると弱冠の誤差が生じるからである。
 竹を適宜な長さに切り終えたなら、今度は実際の筒の長さに切るために印をつける。茶杓の長さが18センチ、蓋の呑み込みが1センチとして約19.2センチあたりに印をつける。2ミリの誤差があるが、これは鋸の厚さを考慮してのことである。印をつけたら大工道具である毛挽きで印をつけると浅い溝ができ、鋸を挽くときに導線となり、きれいに切れ目を入れることができる。もちろん、紙テープで線を引くのもよいが、便利なのはフィルムである。厚みがあり、材質がしっかりしているので何度でも使える。フィルムの天地をあわせてくるりと2重ほど巻き、濃い鉛筆で線を引く。これでまっすぐな線を引くことができる。

■鋸を使って切断する

 鋸は後述する蓋を作るときにも便利な目の細かい胴付鋸がよい。切るときに刃がぶれないからである。
竹は台の上にしっかりと置き、線に添って手前に回しながら切る。手元がよく見える明るいところで作業を行わないと、切り口がズレてくるので注意したい。ズレると切り口は凹凸になり、後の作業が面倒になる。なるべく力をいれずにまっすぐに鋸を挽くのがコツである。
 切り終えたなら、一度鏡に当ててみる。鏡は面がたいらなので凹凸がないかを調べるのに都合がよい。当ててみて凹凸があるようなら鏡の上にサンドペーパーを置き、円を描くようにゆっくりとこすっていく。ある程度、こすったらもう一度鏡に当てて確かめる。これを数回行えばほぼ切断面は平らになっているはずである。
切断面が直角になっていないと蓋との合わせ目にすき間ができる。とことんこだわる必要がある。
 さて、切り終えた竹には2~3センチ幅の切り落としができるはずである。これは蓋づくりのために取っておく。

2 蓋づくり

 蓋の材質は主に杉の赤身の部分が用いられる。わけても四角の角材を横から見て、どの面にも縦に柾目が通っている四角正面柾の材を使うのがよい。
赤杉は容易に手に入らないが、銘木店などで頼んでおけば木っ端を譲ってもらえる。また知人に指物師や建具師がいればお願いするのも手である。

 3センチ四方(筒の太さによってかわる)の角材を用意したら、切断面を刃物で薄く削ぎ、きれいな木目をだしておく。削ぐのが無理ならヤスリなどを使い、とにかく木目がでるように面を美しく仕上げる。
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■寸法を描く

 「のみ込み」の寸法は約1センチ前後。文献をしらべてもおよそこれくらいの寸法である。また、蓋の頭部は1~1.4センチ前後に取る。どちらも寸法に決まりはないので、筒とのバランスを考え作者のセンスでよい。
 寸法が決まれば角材の四隅を落とし、円形または楕円形を作る。この時に角材にこれ以上余分を落とさないように筒の外径も記しておく。作業ではなるべく円柱にするようにする。台形推になると線を引くときに正確に描けないからである。
 円柱形ができたらフィルムなどで使ってのみ込み、頭部と順次にぐるりと線を引く。
つぎに筒の寸法取りでできた竹の切り落としをのみ込み部分の底面にあて、内径をぐるりと鉛筆で線を引く。これがのみ込みの径になる。

■鋸で挽く

 先ほど引いたのみ込み、頭部の線にそって鋸を入れていくわけだが、万力を使うと材が動かず切るのに便利である。慣れないと鋸がぶれ、材に対して垂直に切れないのでよほどの注意が必要である。まっすぐ垂直に切れていれば、筒との合わせ目もぴったりといく。そうでないとどうしてもすき間がでる。ここが共筒作りのもっとも難しいところではないだろうか。
 切れ込みの深さは、基本的には筒内径の太さまでである。薄い紙などを差し込んで確認するのもよい。多少、食い込んでも問題はない。古い共筒の中にはのみ込みの太さより深く切ってあるのもある。

■のみ込みを作る。

 切れ込みが終わったら、先ほどののみ込みの外径を書いた線に添って、切り出しナイフで落としていく。外径線のところまできたら、筒に当てて確認する。入らなければ、さらに不要な部分を落としていく。ただし不要部分を落としていくときに、鉛筆の芯の太さ分だけ実寸より小さくなっているので注意しなくてはならない。鉛筆は濃いもので、芯はなるべく細く削っておいた方がよい。
筒との合わせ面とのみ込みとの直角部分はきれいに処理しておく必要がある。すこしでも削ったカスが残っていると、たとえ筒に入ったとしてもピッタリとはいかないの注意する。

さて、合わせ面がすき間なく合って、のみ込み作りは完成したことになる。少しきついかなと思うくらいが蓋としてはよい。切り落とした後は、けっしてヤスリはかけてはいけない。木目がぼけてしまうことと、ヤスリをかけた分空きができてしまうからである。
 さて、のみ込みはできたが、頭部はまだ四角いままである。これはこのまま残し、筒を削るときに同時に削ることになる。
 蓋作りはとにかく難しい。ひとつ蓋を作るごとに、合わせ目のすき間が埋まっていく、そんな経験と努力が必要な作業である。
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3 筒を削る

 筒の削り方は、前述したように大まかに3通りにわけられる。すなわち「真」「行」「草」ある。ここでは「草」の削りを行なうので、表皮を一定には削がない思いのままの削りをする。銘を記す正面をある程度の幅をもたせてノミで削ぎ取る。筒を手に取り、よく見済まして削らなくてはならない。幅や太さは景色の善し悪しによるため、具体的な数値は表すことができない。
 正面が決まれば思うままに両端の表皮を削いでいけばよい。蓋の頭部もこのとき筒の外口径にあわせていっしょに削り落としてしまう。美しくできれば完成である。

4 仕上げ

 筒、蓋共に表面ができあがれば、最後の面取りとなる。これも決まりがあるわけではない。六面、八面などあるが、環状のものもある。筒にあわせて、それにふさわしい形に削りあげるのがよいと思われる。
表面に美しく木目をだすには、刃物で削ぐのがもっとも美しい。それには、とにかく刃物をするどく研ぐことである。そして、薄皮をめくるように削いでいく。
 また、ほかにもヤスリで磨く方法や、建具屋や指物師が使う「ウズクリ」を使う方法もある。これは各自が好きな方法をとればよい。

5  銘をいれる

 筒と蓋が仕上がれば、最後は銘である。これも簡単に決まる場合もあれば、長年決まらない場合もある。素材にちなんだもの、贈り主にあわせたもの、歌銘・・・など、銘になるものはさまざまである。これも作者のセンスがひかる作業のひとつである。
 銘を書く場合、墨が竹の繊維にそってにじむことがある。この場合、書く前にチョークを塗っておくとにじみがなくなるので、覚えておくとよい。また、墨を濃くするのもひとつである。

以上で「共筒」作りの行程をひととおり説明したつもりである。しかし、作者によって作り方はさまざまである。これがいい、これは悪いというものもないので、もっとも作りやすい方法で作るのがよいと思われる。いつくも作っているうちに新しい方法を会得するかもしれない。これまで述べてきた方法がその参考になれば幸いである。